NEW 戦後アメリカ美術を中心に20世紀美術をふりかえる特別展「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡ ウォーホル、ロスコ、リキテンスタイン」が中之島香雪美術館にて2025年4月6日まで開催

戦後アメリカ美術を中心に20世紀美術をふりかえる特別展「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡ ウォーホル、ロスコ、リキテンスタイン」が中之島香雪美術館にて2025年4月6日まで開催

戦後アメリカ美術を中心に20 世紀美術をふりかえる特別展「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡ ウォーホル、ロスコ、リキテンスタイン」が中之島香雪美術館にて2025年1月18日(土)から4月6日(日)まで開催。

※以下、画像とテキストは、情報提供を受けてプレスリリースから引用

特別展「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡ ウォーホル、ロスコ、リキテンスタイン」概要

本展は、大原美術館所蔵の戦後アメリカ美術を中心に、20 世紀美術をふりかえる特別展です。

戦争を立て続けに経験し、「難民の世紀」とも言われる20世紀は、多くのアーティストが住み慣れた土地を捨て、「移住」を余儀なくされた時代でした。特に、ヨーロッパからアメリカへ渡ったアーティストたちの表現は、確かに美術史を刷新させましたが、異邦の地での孤独と疎外感は、自分とは何者か、美術とは何か、という簡単には答えの出せない大きな問いも、同時に生じさせました。

20世紀美術の巨匠たちのさまざまな表現は、いまを生きる私たちにも、ひきつづき同じ問いを投げかけているように思われます。

展示構成

第1章 ヨーロッパからアメリカへ ージャン・マルシャン《移住者》

眼の前の自然を、立方体、球、円筒などにより、幾何学的に捉えようとした晩年のポール・セザンヌの試み。20世紀初めの幾何学的な表現から、キュビスム、フォービスムなどの半ば抽象的な、新しい表現が生み出されました。

中心地となったのは、芸術の首都パリ。周辺の国々からは、かつてなく数多くの若者たちが集まりました。スペイン出身のパブロ・ピカソはその一人ですが、しかし彼が「外国人番号7 4 . 6 6 4 」としてナンバリングされ、その伝統破壊的な表現ゆえに危険人物として監視されていたことを思えば、時代の風向きは好ましいものではありませんでした。

またこの頃、反ユダヤ主義を逃れるため、ユダヤ系の知識人や芸術家が数多くパリに亡命しました。しかしナチス支配下のパリでは、表現の自由はおろか、存在の自由もなく、シュールレアリスムの提唱者アンドレ・ブルトンがそうだったように、自由を求めて逃れた先は、アメリカ合衆国でした。

さて、本展の口火を切るのは、ジャン・マルシャンの油彩画《移民者》です。振り返れば、20世紀美術の主役は、「移民者」または「亡命者」でした。重くのしかかる抑圧に対し、アーティストたちが、何を思いながら、新しい表現と向き合っていたのか。切り拓かれた表現の奥底には、さまざまに汲み取るべき感情が蠢いているように思われます。

「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡ ウォーホル、ロスコ、リキテンスタイン」ジャン・マルシャン 《移住者》

ジャン・マルシャン 《移住者》 制作年不詳 大原美術館所蔵

「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡ ウォーホル、ロスコ、リキテンスタイン」ホアン・グリス 《コップと瓶》

ホアン・グリス 《コップと瓶》 1917 年 大原美術館所蔵

第2章 抽象表現主義へ

20世紀前半のアメリカ合衆国、特にニューヨークには、キュビスム、ダダ、抽象的表現、シュールレアリスム、あるいは仏教、禅の思想など、ヨーロッパの前衛美術のみならず、アジア発祥の宗教哲学なども紹介され、もはや西洋/東洋の区別なく、いわば文化の坩堝と化します。しかし外来的な表現の影響を受けつつも、1940年代には、それらを決定的に乗り越える、アメリカならではの絵画表現が誕生します。それが「抽象表現主義」です。

大きく分けると、身体性、即興性を重視する「アクション・ペインティング」と、精神性を重視する「カラーフィールド・ペインティング」があります。主な特徴としては、制作行為の「場」としての画面、「オールオーヴァー(包括的)」な画面、装飾額縁の排除が挙げられます。また、無意識や自然が重視されていることから、ネイティヴ・アメリカン・アートの影響も指摘されています。

事実、ジャクソン・ポロックが生まれたワイオミング州コーディは、ショショーニ族やシャイアン族が住む土地です。アーティストが自らの内面に根差し、なおかつ外来の影響を受けつつ切り拓いた表現が抽象表現主義であり、一律に「抽象表現主義」として括ることのできない多様性と精神的広がりを含みます。

抽象表現主義は、美術にとどまらず、現代作曲家のジョン・ケージ(1912 – 1992) やモートン・フェルドマン(1926 – 1987) らの実験音楽にも、インスピレーションを与えました。

「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡ ウォーホル、ロスコ、リキテンスタイン」ジャクソン・ポロック 《ブルーー白鯨》

ジャクソン・ポロック 《ブルーー白鯨》 1943年頃 大原美術館所蔵

特別展示 抽象表現と東洋

このセクションでは20 世紀美術に「流れ込んだ」東洋を探ります。紛れ込んだ、という解釈もできますが、一目で分かる東洋もあれば、目を閉じ、瞑想しなければ見えてこない東洋もあります。「基本的な人間の感情」を表現しようとしたマーク・ロスコ、「余白」を重んじたサム・フランシス、あるいは「書道」に魅了されたピエール・アレシンスキーなど、いくつかの作例に過ぎませんが、中之島香雪美術館所蔵《薬師如来立像》(特別展示) とともに、抽象表現の精神的な部分を浮き彫りにしようとする試みです。

「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡ ウォーホル、ロスコ、リキテンスタイン」重要文化財 《薬師如来立像》

重要文化財 《薬師如来立像》 平安時代 9世紀 香雪美術館所蔵

第3章 ネオダダとポップアート

抽象表現主義につづき、1950年代末から注目を集め始めたのは、大衆的な商品や産業廃棄物を採り入れたキッチュな表現でした。男性用便器に署名をしただけのマルセル・デュシャンの《泉》(1917) は有名ですが、その批判的な手法を連想させるため、「ネオダダ」と呼ばれます。そして1960年代、ネオダダの表現を下地に全盛を迎えるのが「ポップアート」です。初期のダダが第一次大戦に対する抵抗とニヒリズムを秘めていたのと同様に、ここでは第二次大戦後の大量消費社会の虚しさを考え合わせる必要があるでしょう。

厳密に言えば、ポップアートの元祖は、1950 年代半ばのロンドンで発表された、雑誌を切り抜いただけのコラージュ作品ですが、アメリカのポップアートは、大量消費の象徴的イメージとしての安価な日用品や世界的大女優を複製技術でもって大量生産することで、資本主義と同化したのが特徴と言えるでしょう。よく知られているアーティストの一人は、アンディ・ウォーホルですが、「僕を知りたければ表面だけを見てくれたまえ(…)。裏側には何もないんだよ」という彼の言葉は、資本主義の下で何もかもが薄っぺらになってゆく危機的状況を逆説的に仄めかそうとしたのかもしれません。

さまざまなアーティストによる多種多様の制作は、しかし、「ポップアート」という包括的な言葉だけで安易に理解してはなりません。一瞥では表面的であることを否定しえない作品群は、大量の商品と情報に飼いならされた私たちに、目の前の現実を見据えようとする真摯なまなざしのかけがえなさを、いつまでも突き付けているように思われます。

第4章 20世紀美術さまざま、そして…

終章となるこのセクションでは、戦後のアメリカ、またはヨーロッパの潮流を意識しつつ、独自の表現を確立した異彩を放つアーティストたちの作品を紹介します。

戦後のヨーロッパにおける重要な美術運動として、「アンフォルメル(非定形なもの)」があります。アメリカの抽象表現主義やアクション・ペインティングと軌を一にするものですが、戦前の「冷たい抽象(キュビスム)」に対して「熱い抽象」と言われたように、人間的な感情や身体性を回復しようとする表現です。考えてみれば、20世紀の美術は、具象と抽象をめぐる相互の反動だったと言えるかもしれません。

いったい、美術とは何なのでしょうか。また、見る(視る)とは何なのでしょうか。これらの問いをさらになお強く自らに課し、問い直すことは、高度に情報化されつつ混迷を深める国際社会においては、もはや必至と言ってよいでしょう。韓国の金昌烈が「水滴」を通じて具象・抽象を超越しつつ、ひたすらに追い求めた東洋的無常の明澄さ。あるいは、岡山県出身の写真家、小野博が倉敷で撮影した「嬉しい誤算」としての小学生の集合写真。何より大切なのは、誰に強制されるのでもない、ストレートなまなざしなのです。

最後になりますが、茶室「中之島  玄庵」では、イヴ・クラインの《青いヴィーナス》を展示しています。茶道の美学と共鳴するインターナショナル・クライン・ブルーの「宇宙の神秘」をどうぞお見逃しなく。

「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡ ウォーホル、ロスコ、リキテンスタイン」イヴ・クライン 《青いヴィーナス》

イヴ・クライン 《青いヴィーナス》 1962年 大原美術館所蔵

開催概要

展覧会名特別展「大原美術館所蔵 20世紀美術の巨匠たち♡ ウォーホル、ロスコ、リキテンスタイン」
会期2025年1月18日(土)〜4月6日(日)開催終了
時間10:00~17:00(入館は16:30まで)
※4月4日(金)は10:00~〜19:30(入館は19:00まで)
休館日月曜日(月曜日が祝・休日の場合は開館、翌火曜日が休館)
会場中之島香雪美術館
住所〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島3丁目2−4 フェスティバルタワー・ウエスト 4階
MAP
入場料一般/1,600円(1,400円)
高大生/800円(600円)
小中生/400円(200円)
※( )内は20名以上の団体料金

【割引サービス】
・本人と同伴者一名 
 朝日友の会(200円引き)、障がい者手帳(半額)
・本人のみ
 藪内燕庵維持会(200円引き)、フェスティバルホール友の会(200円引き)、
 兵庫県芸術文化協会友の会(200円引き)
チケット購入先公式オンラインチケット
美術館公式サイトhttps://www.kosetsu-museum.or.jp/nakanoshima/
SNS一覧
主催公益財団法人香雪美術館、朝日新聞社
協力公益財団法人大原芸術財団
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